私が初めて海外留学したのは、かれこれ30年も前のこと。公務員として仕事を始めて数年経った頃のことでした。休暇という休暇をつぎ込んで1ヶ月の休みを取り、ロンドンでホームステイをしながら語学学校に通いました。この頃からとにかく英語の勉強をしたいと強く思っていました。その理由は定かではなく漠然とした感覚のようなもので、日本語以外の言葉を自由に使って世界中どこででも生活できるようになることが、とってもやりたいことだったのです。
その頃は飛行機のチケットも高かったけれど、働いたお金をやりたいことにつぎ込むことに迷いはなく、職場にいた英語の堪能な先輩から、勉強するにはこういう語学学校を選ばなきゃダメよ!みたいなアドバイスもいただいて、いろいろ調べて全部自分でコーディネートしました。
それまで海外旅行には何度か行っていましたが、海外での長期滞在は初めてですし、ホームステイも初めて。何もかもが初めてずくしでドキドキしました。2階建てバスに乗って学校へ通い、授業が終わると地下鉄でいろんな所へ行っていました。
通っていた語学学校には、それこそ世界中のいろんな国から英語を学びに来ている人がいました。イタリア、ベルギー、スペイン、ドイツなどなど。韓国や中国の人もいました。友だちもできました。友だちとの会話は、お互い共通言語が英語しかないので、通じようが通じまいがとにかくしゃべるしかない!という感じでコミュニケーションをとっていました。授業も楽しくて、学生気分を満喫しました。
1ヶ月が過ぎ、日本へ帰らなければならないとなった時、気づいたことがありました。それは「耳が慣れてきている…。」という感覚でした。1ヶ月かけてやっと少し耳が慣れて言葉が自然に聞き取れるようになってきていたのでした。それなのに、やっと耳が慣れてきたのにそのタイミングでもう帰らなければならないなんて。こんなにもったいないことはないと感じました。せっかく来たのに。せっかく聞こえるようになってきたのに。
その時思いました。季節が1周する期間ずっと生活することができたら、言葉は自然に体の中に入ってくるなと。このときから1年間海外で生活することが私の夢になりました。やろうと思えばすぐにでも実現できる夢でしたが、公務員の仕事を辞めなければ叶えることができないとなると、すぐに実行することはできませんでした。せっかく手に入れた安定した仕事を手放すわけにはいかないと思い、1年間海外で生活するという夢は叶えられないまま時間が過ぎました。
時は過ぎ、1回目のチャンスは仕事を早期退職した時にやってきました。仕事を辞めればすぐにでも海外で生活を始められたはずです。でもその時は、気持ちが海外生活実現には向きませんでした。仕事を辞めるということ自体にエネルギーを奪われたことが一番ですが、他にも退職後の起業を考えなければならなかったことも大きな理由です。そんなわけで、1回目のチャンスはタイミング的に合いませんでした。でも決して諦めたわけではなく、1年間海外生活への想いは私の中に変わらず強く存在していました。